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トップ記事2025年6月4日

⇩豊田織機VS牧野フライス⇧ 話題のTOBそろって具体化も 「価格」で明暗鮮明に

牧野フライス(6135・P)の一時4.99%高に対して豊田自動織機(6201・P)は一時13.18%安。3日引け後にTOB(株式公開買い付け)の発表された2銘柄が奇麗に明暗を分けた。ともに実際の買付開始は12月ごろとみられ、今回はいわば“予告編”。またTOB自体、それぞれ事前に報じられてきた通りの内容だが、問題は価格面にあった。豊田織機に対する買い付け価格が1万6,300円と3日終値1万8,400円を大きく下回っていたためだ。

そもそもの発端は4月25日引け後。日経電子版などが「豊田織機が株式非公開化を検討していることが分かった」と報じたことから相場が始まった。この時点の株価は1万3,225円だが、その後一部報道とも相まって期待感が先走り、4割近く上昇していた分、ハシゴを外された格好だ。

市場では、3日寄り前に発行されたトヨタ自動車リリース「一部報道について」にもあらためて関心が寄せられていた。「当社から公表したものではありません」「本日機関決定する予定です」「決定しましたら速やかに開示いたします」というほぼ“定型通り”の文章のなかに、「株式取得の対価総額が6兆円規模に上るかのような記載をはじめ誤解を招きかねない内容を含むものであり」と妙に具体的な記述が見られたためだ。実際、発表されたTOB価格ベースでは5兆2,000億円強にとどまった。

とはいえ、思惑で買い上がった目先筋の自業自得、とも言い切れない。決算発表時に示された3月末時点の1株純資産は1万6,273円。これで弾けば一応PBR1.0016…倍とはなるが、4日のオンライン説明会に参加したアナリストはレポートで「『本源的価値』を基に算出されたとのことだが、納得感は薄いと感じた」(東海東京インテリジェンス・ラボ)などとしていた。

さらには、株式非公開化に対する意義・目的が「具体性に欠ける印象」、今回の再編スキーム自体についても、「従来のグループ上場各社による持ち合い構造が、ブラックボックスであるトヨタ不動産とその子会社を中心とした構造に移行するだけ」などとも手厳しく言及している。日本経済新聞の指摘する「再編が『日本株式会社』が巻き返すきっかけになるか」はまだ不透明な状況だ。

一方で、アジア系投資ファンドMBKパートナーズが掲げた牧野フライスへのTOB価格は1万1,751円。5月8日に「同意なきTOB」を撤回したニデックの買い付け価格1万1,000円を6.8%上回る。ニデックの買収に抵抗し続けた経営陣も「賛同の意見表明及び応募推奨」を開示し、友好的買収となった。

PBR1.2倍水準は必ずしも高くはないが、水面下で交渉したとされる日本産業推進機構などの他のファンドは既に撤退したとみられ、競りかけるムードもなさそう。なおニデックによる買収と比較すれば、業務面のシナジーが期待できず、買収後は財務負担なども懸念されるところ。また、いずれ来るファンドの『出口』戦略はどうなるか。2019年には、ファンドの持つぺんてる(未上場)株式が意に添わぬ相手のコクヨに売却されて騒動となった経緯もあるが、数年後、「牧野フライス株式をニデックに売却」といった展開もないではないのかも。

いずれにせよ、両銘柄とも向こう半年間は「TOB価格を若干下回った水準」での小浮動が続くことになりそうだ。(K)

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